HIDT Forever 11話「forever pudding」
HIDT Forever11話
「forever pudding」
6/20日(月)
試練のため、今日からターゲットの尾行が始まった。HIと封筒は部活動に所属していない(しようとは思ったが、部活動の自己紹介の時に大失敗し行けなくなった)ため放課後は基本空いている。そのため、二人は放課後に時間を絞り、授業後すぐあの子の教室に行き、毎日尾行をすることに決めたのだった。
「おいHI、今日から尾行やな。捕まらないようにしないとな」
「おい、物騒なこと言うなよ。でも法律的に言えばスカーカー規制法に引っ掛からなければ大丈夫や。ストーカー規制法の要件は【特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的】って書いてあるし、俺らのやっていることはこの法律の要件には入らなそうや。しかも探偵業法には探偵活動を目的とする尾行は法律に触れないと書いてあったぞ。」
「おい、お前どんだけ準備満タンなんだよ...。」
「こんな変なところで捕まってたまるかよ。当然や。」
「じゃあ俺らは探偵団見たいなもんやな。コ◯ンみたいなやつ...?。そうだ!」
突然封筒はなにか変なことを思いついたように声をあげ、子供のようにキラキラした目で話しを続けた。
「せっかくだし名前決めねえか?まだ俺ら二人しかいねけど。こっからたくさん仲間作ってでっかい組織にしようぜ!やっぱり俺らの団結力っていうか、友情っていうか...そういうものがグループを作ることで形になる気がするんや」
「いいな、封筒。お前もたまにはいいこと言うやんけ。じゃあ、名前はどうする?」
「うーーん。全然思い浮かばねー...。HIなんかいい名前ねえか?」
HIは頭をかかえた。今まで何かに名前をつけたことなんてほとんどなかったからだ。ポケモンというゲームをやっていた際、ナットレイとかトロッゴンなど嫌いなポケモンに変な名前をつけたことはあったが、正直センスはイマイチだったし、HIにセンスという言葉はとてもじゃないけど似合わなかった。
「うーーん。プリンのスプリンクラーってどうだ?」
「なんだよそれwwwどう言う意味だよww」
「うーーん。プリンってさあんなに柔らかいのになんであの綺麗な形を保ってていると思う?」
「たしかに。今思えばあんなぷるぷるしてるならすぐ崩れちゃいそうだよな。なんでだ?」
「砂糖には熱凝固性っていうのがあってな。プリンを作る際に、砂糖の量が多すぎたり、少なすぎたりすると形が整わなくなるんや。俺はこの砂糖の役割に感動したんや。砂糖って調味料やろ?料理の合間合間に入れるだけで、砂糖をメインで食べるやつはおらんし、砂糖が入っている食べ物を食べても、砂糖うめぇーー!って言いながら食べるやつもいないやろ。でも縁の下の力持ちとして色々な料理に入ってるんや。俺らもそんな色々なものを影で支えるやつになりたい。そう思ったんや。おれら陰にはメインディッシュとしての荷は重すぎるからな。」
「だったら、砂糖って名前を入れた方がいいじゃないか?なんでプリン...」
「頑張ってこじつけて考えたんだから、そんなどうでもいいことは聞くな...勘のい
いガキは嫌いだよ...」
「すまんww」
その後封筒の提案もあり、彼らの名前は【foever pudding】になった。直訳は永遠のプリン。プリンのような甘い経験をいつかはしてみたいという願いからつけたらしい。両者納得の素晴らしい名前だった。
「HI、そういえば今日の尾行の前に彼女の事前情報を入手しておいたぜ。これを見てくれ。」
そういうと封筒は学校のバックから大量のファイルと写真を取り出し、HIの机の上に広げ始めた。
「おい、お前....こんなにどこで手に入れたんだよ...。もうこれだけあれば調査要らなくねえか絶対...」
HIは封筒の準備の良さに感心する反面、謎の気持ち悪さに説明不能の違和感を覚えた。
「なに言ってんだよHI。こんなん俺にしてみれば余裕だぜ。ネットの力は怖いんだぜ...」
「お前だけは絶対、敵に回したくないし、お前の将来の妻も絶対不倫なんかできなそうだな...」
「不倫だかプリンだか知らねぇけど俺の前じゃ嘘は効果をもたないぜぇ。俺の持つ透視能力は相手の嘘すらも暴けるんだからな、ハハハ」
封筒は自慢気に自分の謎の能力を自画自賛した。
封筒の能力は昔、発達障害と言われ、周りの目からバカにされていたらしい。しかし、彼は周りに屈さず、自分の能力を極め続けた。
そう、それも彼の野望...パンツの色を見るために....。その結果彼にはパンツの色だけでなく相手の嘘を見抜く力も同時に備わってしまったのだ。
「やっぱお前すごいな封筒。お前と一緒ならどんな危険があってもお前になすりつけてどうにかなりそうだぜ。」
「フッ、いいこと言ってくれるじゃねえかHI。俺にはわかるぜお前の真意。」
「まぁなにかあったら余裕でお前の命でもなんでも差し出すけどな。」
「マジっぽいのはやめてくれぃぃ!」
「嘘だよ笑」
僕らは青春を謳歌している。そう、僕らなりの青春を。
近年、やりたいことを心の底から楽しめている人は日本に何人いるだろうか?どんな時も子供の頃の気持ちを忘れずに、自分の童心に従い、人生を楽しめている人は何人いるだろうか?
時には失敗し落ち込み、時に成功し、友と喜びを分かち合う。そんな人生は大人になってからはできないのだろうか?答えはnoである。
生憎、日本には同調圧力というものが根強く残っている。大学に行って、まともに就職をするべきだ。無謀な夢は見ずに、いい会社に就き、働くべきだ。僕はこのような圧力に縛られる不自由な生活はしたくないと心から思った。
プリンのように、周りの衝撃をも吸収し、自分の形を常に保てるような、そんな存在になりたいと思った。
必ずしも自分のやっていることが周りから評価されるとは限らない。
でもだからといって諦めたり、他人を嘆くのは本当に正しい選択なのだろうか。
僕らはこの先の未来、さまざまな経験をするだろう。でも一つ、童心だけは忘れないでいたい。
HIはそう心に強く思ったのだった。
「あの子の名前は上村音。この私立ランクマ学校の2年生だ。クラスは2年E組。特に部活動はやっていないらしい。突出していうことはないが、両親は官僚で、かなりお金持ちらしい。タワーマンションの最上階に住んでいるとの噂もあるぜ。」
「お前そんだけ資料あって情報力これだけかよ....。」
「他にも3サイズはバスト82cmウエスト54.5cmで、、」
「いや、もういい。やめろ封筒。お前他の資料は全部そういう系か?」
「無論そういう系だ。」
HIは封筒のいつにも増す気持ち悪さを心配したが、怒る気持ちにはなれなかった。
「わかった。じゃあとりあえず2年生の棟に向かおうぜ。」
「おう。」
二人は1年生棟を抜け、隣の2年生棟へと向かった。放課後ということもあり、人でごった返しており、小さな女の子を見つけるのはとても困難なように見えた。
「おいおい、2年生棟ってこんなに人たくさんいるのかよ。きついぜマジ。」
「しょうがないだろ...とっととE組に行くぞ。」
「おうよ。」
そうこうして二人はE組に着いたが、あの子の姿は既になかった。
HIは焦りながらも、前にたまたまいた上級生に声をかけた。
「すいません....上村音さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、あぁ音ね。いつもは確か黒いリムジンが迎えに来るんだけど、今日は都合があって来れないから一人で帰るって言ってたね。いつも裏門から帰ってるから、今すぐ裏門に向かえば会えるんじゃない?」
「あ、、ありがとうございますっ!」
二人はその情報を頼りに足速に裏門へ向かった。
裏門に着くと、あの時の小柄な少女が、艶のある髪を夕日になびかせながら歩いているのが見えた。
「おい、HIいたぞ!あの子だ!」
「間違えなさそうだな」
HIはこの前もらったコンタクトをすぐにつけ、アモルの量を確認した。
「うん。やはり間違いなさそうだ。封筒、こっそり追うぞ!」
「おう!まかせろ!」
そう意気込むと、封筒はバッグの中からあんぱんとサングラス、牛乳を取り出した。
「なんだそれお前。」
「いや、張り込みって言ったらこれだろやっぱ!HIの分もあるぜ。」
「いやいや、あんぱんとサングラスは分かるけど牛乳はなんか違くねえか..」
「まぁ細かいことは気にすんなって。ほら、お前もとっととこれ付けて、あんぱん食いながらやろうぜ」
封筒の謎のこだわりに翻弄されながらも、後ろから彼女をゆっくりと追跡する。
彼女は学校の裏門を出てまっすぐとすすみ、大通りに出た。
「なぁHI。あいつの家どんなだと思う?」
「まぁ、官僚の娘だろ。例えばほら」
HIはとりあえず目に見えた大きなビルを指差した。
「あんな感じのビルの最上階とかだろ。知らんけど」
「お前あのビルはデカすぎだろw流石にやばいわw」
「でも、あの子そっちの方向に向かってるけどそれはどう思うよ」
「そんなんたまたまだろ。あんなところに住んでる金持ちなら3秒で告白しちまうわw」
「あの子、このビルみたいなマンションに入っていったけど、どうよ」
「え、えぇぇ!」
彼女はこの近辺では一番でかいと思われるマンションに入っていったのだ。ロビーの入り口には屈強な黒人ガードマンが一人立っていて、侵入者を阻んでいるようだった。
「おい、HI!どうすんだよ、あの子入っちゃうぞ!」
「静かにしろ。俺にいい考えがある。耳を貸せ」
そう言うとHIは封筒の耳元で作戦をゴニョゴニョと話し始めた。
「こんなんうまくいくのかよ本当に!?まぁHIのことだ、なんとかしてくれるんだよな。」
「あ、あぁまかしとけ。仲間だろ。」
「お、おう!」
「hello? uhh..I am futo. ahh...
BY THE WAY!!! ARE YOU STUPID!?
BRING IT ON, MOTHER F○UKER!」
そう英語で告げると、封筒は一直線に走り始めた。
「ahh!?」
外人は封筒をぶち○そうと、狂ったように封筒を追いかけた。
「今だHI!!」
「おう!!」
一直線に走る黒人ガードマンの足に向かって、柱の影に隠れていたHIが思いっきり足を出した。
「what!?!?」
黒人ガードマンはそのままの勢いで盛大に転け、そのまま地面に思いっきり頭をぶつけ、その場で気絶してしまった。
「うまくいったなHI。でもこれって俺の危険度がお前より高すぎねえか?」
「バカ言うな、俺の足がこいつに踏まれてたら俺の足は骨折して使いものにならなくなってたんだぞ」
「でもこいつが俺より足早かったら、俺だけ捕まってボコボコにされるよなこれ。」
「まぁその時は逃げるから安心しろ。任務に犠牲は付き物だからな。」
「おまえなぁ....」
「まぁそんなことより後を追うぞ。」
「了解👌」
二人はエントランスから中に入ると、奥にあるエレベーターに向かって全力で走り始めた。
「あぁああ!?」
封筒は突然何かに足を取られ、その場で思いっきり転けてしまった。
「おい、どうした封筒!!おまえ!」
「君たち。なにしてるの。」
そこには柱の影で隠れていた音がいた。
「やべ、バレたか。」
HIは焦るあまり、言ってはいけないことを言ってしまった。もはや言い訳の余地は二人にはなく、完全に固まってしまった。
「いい。来て」
そう小さな声で呟くと、彼女はエレベーターに乗って上の階に行こうとした。
封筒は完璧に廊下で伸びてしまっているので、一旦放置し、そのまま彼女に言われるがままエレベーターに乗った。
エレベーターはとてつもない速さで急上昇し、階の表記は47..48..49..と上がっていた。それに伴い、高所に上がるのを慣れていないHIは少し頭が痛くなった。
「君の、いや、先輩だから敬語で。先輩の家は何階なんですか?」
「60...一番..上」
「なるほど....。」
世界一盛り上がらない会話がエレベーター内で繰り広げられる中、そんな雰囲気を遮るように60階に到達した音が聞こえた。
60階には部屋が一つしかなく、その子の家だけが特別に設けられていると言う感じだった。
「あの....すいません。」
「中。入って。」
「あ、はい。」
言われた通りHIはこの世のものとは思えないくらい豪華なドアを、妄想の中ではでは金持ち気分で豪快に開け部屋に入った。
中はとても広く、10LDKはありそうだった。リビングからは六十階の超高層からの広々とした景色が一望できる作りになっていた。
「あのぉ、尾行してたことは申し訳なかった。色々あって....でも君のことを助けたくてやってたことなんだ....」
「どうせお姉ちゃん...。君...悪くない...」
「え、お姉ちゃん?ん?え、まさか...」
HIは今まで起きたことと、今言われたことを頭の中で整理するので必死だった。
それと同時に、今足を突っ込んでいる事態の規模の大きさを暗に悟ったのだった。
11話 完
~あとがき~
封筒毎回大事な時倒れてるの草。
5000文字超えの中ここまで見てくれた方には感謝!
出来れば感想等を一言くれるとモチベに繋がります。
最近塾の生徒に「もし次のテスト80点超えたらおれが最近ネタで書いてる小説見せてやるよ」と調子乗ったところ、80点を取られてしまい、うれしい半面、しっかりかかないとやばくねって思うようになりました。(´;ω;`)
予想だとまだまだ続くので、くそくだらない話ですが最後まで見てくれてる人が一人でも楽しんでもらえたら最高です。ではまた!