HIDT Forever 18話「光と闇」

HIDT forever 18

 

2章 ー異世界との繋がり編ー

「光と闇」

 

 

HI起きなさいー!!学校の時間よ!」

いつものように母親の声が、HIの住む小さなアパートの一室に響き渡る。

HIは重い腰をあげ、目を軽くかくと、自分の部屋のカーテンを開けギラギラと光り輝く太陽の方に目を向ける。

 

「いつもの朝や。」

外務省での一件が終わり、アモルについても新たに分かってきたことが多くなってきた。

音は相変わらず家に帰ることはなく、HIの家の一員として暮らしており、今日も妹と一緒に朝食の手伝いをしている。

ここだけを切り取れば、こんなに充実した生活を送っていいのかと思わんばかりの幸せさだった。

しかし、HIにとってこれは終わりではなく新たな試練の始まりにすぎなかったのだ。

 

「今日の飯はなんやー」

HIはこの前音からもらったミサンガの付いている左足を、軽く掻くと、自分が朝食の時に必ず座る定位置に座った。

 

HIにぃ!今日は大好物の、プリンだよ!私と音ちゃんで作ったの!

 

「朝からプリン作り!?バレンタイン前だけにしてくれよそういうのは...。そんなん食っても全然頭に養分回らんやろ。」

 

「ひどいっ!!じゃあHIにぃの分はなしだ!

ねぇ、ひどいね音さん!こんな男に将来ひっかからないようにね!」

音は妹の辛辣な一言に対して返す言葉がうまく見つからず、うじうじとしている様子だった。

 

「悪かった悪かった。プリン俺好きなんや、ぜひ食べさせてくれ。一緒に食べよう?な?」

 

「えーー、おそいなーー。せっかく作ったんだからなんかご褒美ちょうだいよじゃあ!」

 

「ご、ごほうび!?何が欲しいんや。」

HIは自分のためにあまりお金を使わないため、月のお小遣いがどんどんと貯まっており、今となっては小学生のころから愛用している豚の貯金箱に10万円以上はお金が貯まっていた。

 

「うーーん。なんでもいいよ! ついでに女の子へのプレゼントのセンスがあるかどうか試してあげる!」

 

「あぁ、でたでたそういうやつ...。音ーこう言う時って何買えばいいんだ?」

 

「だめーーっ。音さんに聞いちゃ!あ、ちなみに、音さんの分と2人分だからね!よろしく!」

 

「はぁ。」

厄介なことになってしまったなと少しめんどくさそうにHIはため息を吐いた。

HIは女性経験のなさから、女子という女子にプレゼントを贈ったことなんて今の一度もなかったからだ。

 

唯一HIが女子にプレンドをあげたことがあるとすれば、中学校の時のバレンタインの日。HIはもらえなすぎたせいか、男子が逆にチョコをあげるいわゆる逆バレンタインをかまそうと思ったらしい。

それで、当時好きな女子にお小遣いを全部叩いて「よっちゃんいか」の箱セットを送ったことがあった。

当然ウケがいいわけがなく、その日から毎日のように、イカクセェと言われるようになった。

イカクセェのはまた別の理由な気がするが...

 

妹と音が作ってくれたプリンをありがたく食べ、朝食を終わらすと自分の部屋に戻り身支度を開始した。

 

今日は日曜日なので本来なら休みのはずなのだが、以前生徒会長からもらった名刺にかかれていた生徒会の集まる基地のような場所に封筒と行くことになっていた。

生徒会には同じような境遇な人たちが集まっていて、仲間が作れることを期待していたからだ。

 

HIは昨日の夜、徹夜で作った新作の発明品をバッグの中に入れ、封筒との待ち合わせ場所に向かうべく外に出た。

 

外は梅雨の時期にさしかかり、夏休みを目前に控えていた。

先週末から毎日ように雨予報。こんな日は外には出ずに、家の中でできることをするのが一番良いのだが、今のHIはそこまで暇ではない。

 

1年前に妹からもらった大好きなアニメのキャラクターの傘を堂々とさしながら、人通りの多い大通りをどんどんと歩いていく。

 

「よっ。HI待ってたぜ」

そこには、同じアニメでもう一人の人気キャラの傘をさしながらファミチキを咥えている封筒が立っていた。

 

「お前相変わらずその傘.....

 

「その傘..?

 

イカしてるじゃねぇか!!」

 

「あたりめぇだろ相棒!!こんな可愛いキャラクターこの子以外いないんだからよ。」

 

「いやこっちのキャラの方が可愛いぜ封筒。さらにこちとら妹から買ってもらったって言う箔がついてるからな?」

 

「な、なんだと...?

 

「ふっ、お前には到底むりなことや..

 

いつものくだらない会話をかましながら待ち合わせ場所である建物の五階へと足を運んだ。

 

建物の見た目は明らかに廃墟...と言うわけではなく、普通に整備されたビルのような場所だった。フロア別の店名を見てみると五階には「FURIA」とかかれた喫茶店の名前がかかれていた。

 

「なるほどあいつらはココの喫茶店をねじろにしてるってわけか..

 

「よっし、行こうぜHI

 

「おう」

2人はエレベーターで五階まで上がり扉に手をかけると鍵がかけられていることに気づいた。

 

「おいおい、ここ鍵かかってるぞ。おーーーい!誰かいねぇか。」

 

ゴンゴンッ

「あぁ?お前ら誰だよ。俺らになんのようだ?」

 

扉から出てたきたのは身長約185センチの巨体とありえないくらい太い腕に筋肉を宿した人物だった。よくみるとHIたちと同じ制服を着ており、体の大きさと見合ってないからか、張り裂けそうになっていた。

 

「俺はHIって言うんだが、生徒会長からこの名刺をもらってな、ここまできたってわけだ」

HIは会長からもらった名刺を差し出した。

 

「ガハハッ!!こいつらがあの例の!これこれは失敬したぜ。まさかこんなに弱そうなやつが雪華の姉貴を助けるとは思わなくてな。ぜひ入ってくれ、歓迎するぞ」

 

「あぁ!?俺らのことなめてんのか!なめてたらやっちゃうからな?

封筒はこう言う時に空気を読める人間ではない。完璧にやられる側なのにも関わらず舐められないように高圧的な態度を貫き通した。

 

「ガハハ!嫌いじゃねえぜ、そう言う性格のやつ。お前は封筒?だよな。聞いてるぜ、まぁとりあえず中に入れや」

 

「しょうがねぇなぁ...?ちょっとだけだぞ?」

こっちからきておいて封筒の態度は意味がわかなかった。きっと先の一件を解決したことで自分に自信を持ってしまったのであろう。

自信は時には自分を鼓舞するエネルギーになるが、使い方を間違えると慢心に繋がり隙が生まれてしまう。まだ封筒は自信の使い方がなっていなように感じた。

 

店の中の様子だが、やはりserenaと同じようにたくさんの本が棚には置かれており、奥の方にバーカウンターがあった。おそらくこの場所にもアモルに関する文献が山のように貯蔵されているんだろう。

「まぁ、ゆっくりしていってくれよ。今日は俺だけしかいねぇんだがな。」

 

「え、なんでだ?生徒会の本拠地なんだろここは?

 

「まぁそうだが、他の奴は全員所用で外に出てるんだ。だから本当は今日は休みのつもりだったんだが、雪華さんが客がくるから1人はいておけって言うから、ここに残っているってわけだぜ」

 

「そうか、それは悪いことをした。」

 

「いや、いいんだぜ兄弟。あ、名乗り遅れた。

俺はライト。ダグラスライトだ。よろしく頼むな。」

 

「俺はHIだ。よろしく」

「俺は封筒や。HIとは昔からの親友や」

 

封筒と出会ったのは4ヶ月前くらいだし、全然親友ではないんだが、今はその細かいところを突っ込む気力がないので放っておこう。

 

「それで?俺らはなぜここに呼び出されたんだ?

 

「そうだな。俺の方に雪華さんから、頼まれていることがあるからまずそれから終わらせてちまうぞ。」

そういうと、ライトはバーカウンターから何やら水晶のようなものを取り出した。

 

「なんだこれは?

 

「お前ら飲んだんだろ?例の薬?これはその薬を飲んだやつが、能力を覚醒したか、それともアモル欠乏症になってしまったかをみることができる検査キッドのようなものさ。雪華からこれをやらせておけって言われているからな。」

 

「僕だけが飲んだだけだから、封筒の方はやる必要はないぞ」

 

「お、封筒。お前は飲まなかったのか。びびっちまったのか?」

 

「ちげぇよ!俺だって飲もうと思ったが、親友がまだ飲むなって言うからよ..

 

「まぁ、リスクは少ない方がいいだろ?こいつはこれがなくても十分戦える。そう判断したんだ。来る時がくれば飲ませるかもな。」

 

「そうかそうか!お前らは信頼しあっているんだな!いいことだ!チームワークがあれば普段以上の力を出すことができるからな!」

 

ライトは二人の友情に感心したようで、その場で大きな声で笑い始めた。

 

「それで?これはどう使えばいいんだ?

 

「そうだったな。すまんすまん、お前はこの水晶に手をかざすだけでいい。もし能力をゲットしていれば光り輝くはずだ。」

 

「わかった。やってみる」

 

HIは水晶の前に立つと、右手を水晶にかざした。水晶は綺麗な透明な色から徐々に色を失っていき、みるみる黒くなっていくのが見えた。

 

「おいおい、どうなってんだHI!光るって言うか、なんか闇のオーラみたいなの纏い始めてっけど!

 

「なんだこりゃぁ!?俺も見たことねぇからわからんぞこりゃ。」

水晶は黒く濃く濁り、まるで水晶の中で落雷と竜巻が発生しているかのように荒れた模様になった。

 

「なんだなんだ!!」

水晶はHIの前で浮き始め、そのままHIの前で粉々に割れてしまった。

 

....

....!?

 

一同は言葉を失いその場に立ちすくんでいた。

 

「これは...能力を手に入れられてんのか?」

「いや、わからん」

「いや、わからん」

HIとライトの声がその場でハモった。

 

「これあれか?闇の力がまとっちゃった的な?チート能力ゲット的な?

 

「いやいや、そうなのか?これ雪華さんに聞いてみないと全然わからんけど、そうだったらめっちゃ熱いぞぉ!」

 

HIさすがやぁ!俺の見越したお・と・こ!」

 

なぜか2人は意気投合し、目の前の状況にとてもテンションを上げ、喜び始めた。

 

「これ、大丈夫なんか?本当に...とりあえず雪華に聞いておいてくれライト..

 

「わかった。聞いておこう!」

 

「頼んだ。」

そういうと、ライトはバーでご自慢のコーヒーを淹れ封筒とHIに振舞ってくれた。

 

「せっかくきたんだもう少し話していこうぜ兄弟!何か聞きたいことはあるか!

 

「そうだな、生徒会についてもう少し聞きたいな...

 

「おう!いいだろう!俺ら生徒会の主要メンバーは全部で5人だ。生徒会長の雪華。そして副会長、あとは幹部が俺含めて3人だ。」

 

「全員能力者なのか?」

 

「まぁそういうことだ。全員ありがたいことに能力に覚醒している。だが、俺も含め家族がアモル欠乏症になっているやつらがほとんどだ。」

 

「なるほどなぁ」

 

「俺らの目標は、家族の病気を治すこと、さらにはこの腐った世の中を変えることだ。お前らも知っている通り、この世の中はアモルの能力を利用したアホな大人たちが仕切っている。このままだと選ばれるものだけが幸せになり、選ばれなかったものだけ死んでいく、本当の地獄みたいな世の中になっちまう。それを阻止するためにももっとアモルについて理解し、世の中を変える必要がある。それで結成されたのが俺らってことだ。」

 

「生徒会のやつらはみんな強いのか?

ライトはコーヒーを一気に飲み干すと、ニヤリと笑みを浮かべ話を続けた。

 

「俺らの生徒会長、雪華の能力は化け物じみているいるとは聞いているが、俺も正直詳しいところはわからねえ。まあ、能力っていうのはあまり教えない方が強いだろ?あと副会長もあまり会わないからな、能力のことは教えてくれねぇんだ。でも俺なんかが太刀打ちできる奴らではないことは事実だ」

 

「えぇ、、あいつってあぁ見えてあんな強いやつだったのかよ...HIやべぇなその能力ってやつ。」

 

「あぁ、予想以上に厄介な能力を持ってるみたいだなあいつは..。ちなみにライトはどう言う能力なんだ?

 

「俺の能力は全然強いものじゃねえぜ。いわゆるサポート系ってやつだ。能力の名前は「ブレインシェア」他人の見えてる世界が共有されるからチームで動きやすくなる。まぁそんな感じかな。」

 

「おまえ、その見た目でその能力はびっくりだな。」

 

「能力が微妙だから体を鍛えてるんだ!だから物理戦闘なら任しとけ、ベンチプレスは250キロまでいけるからな。」

 

「ベンチプレス250キロってゴリラじゃねえかよ。怖っ。」

 

「まぁフライパンを一気に5個折り曲げてギネス記録貰ってるからな。」

 

「なんだそのいらねぇ記録は」

 

「そんなこと言うなって兄弟。まぁ俺らはもう仲間だ、いつでも俺のことを頼ってくれよな!ガハハハッ!」

 

「それは、助かる...。じゃあ封筒。俺らはそろそろ帰ろうぜ、例のアニメをオンエアで見ないといけないからな」

 

「例のアニメとはなんだ?まさか、プリプリ海牛くん3のことか!?」

 

「おっ、よくわかったな。今季1番の推し作品、プリプリ海牛くん3号だ!」

 

「おおぉ!おまえもプリ牛を見ていたとはな!気に入った!!お前たちには連絡先を渡しておこう。受け取れ!

 

「お、ありがとな」

3人は今季再注目のアニメ「ぷりぷり海牛くん3号」の話で意気投合したようで気づいたらさらに仲良くなっていた。

 

「じゃあな、兄弟!今日の最新話が終わったら感想戦でもやろうぜ!」

 

「おうよ!兄弟!任しとけ!

 

「そうだ最後に言い忘れた、お前らは先の一戦の影響もあってかお尋ね者さ。政府が本格的にお前らをつぶすために動いてるらしいからな。十分用心しろよな。自分や、自分の周りを守れるのはお前ら自分自身の力だけだからな。」

 

「ああ、気を付けるよ。ありがとな。」

 

感想戦の約束と忠告を受け、2人はその場を後にした。

 

HIは帰り道を封筒と歩いていると、今朝妹と、音になにかプレゼントを買うという約束をしたことを思い出した。

 

「封筒すまん。先に帰ってくれ。急用を思い出した。」

 

「お、そうか?じゃあ、気をつけて帰れよなー」

 

HIは封筒と別れると、雑貨屋さんに入った。

 

「これでいいかなぁ...

HI3時間以上悩んだ末一つに決め、レジでお金を払い、店を後にした。

 

(プルプルプルッ【着信音】)

 

「誰だ、この電話番号?はい、HIですけど。」

 

「お兄ちゃっ....!。」

電話の先からは妹の声が確かに聞こえた。

普通ではない、HIの感は危険信号を体全体に訴えていた。

 

HI。お前の妹は預かった。返してほしければ追って連絡する場所にこい。変な真似をしたら妹とは一生会えなくなるだろう。」

(プツッ【切れる音】)

 

「おい!!おい!お前誰だ!!なんだそれは!ふざけんな!」

 

もう切れているため、電話からの返答はない。

 

「うあああああ!!!」

HIは大雨の中、プレゼントを片手に天高らかに大きく怒号を響かせた。

 

18話完ー

 

 

 

 

ーあとがきー

ついにHIDT Foreverも新章に突入!

さらなる秘密がHIたちを襲う!?

今後の展開にとうご期待!!

 

私事ですが、昨日、新型コロナウイルスに罹患してしまいました。

たくさん小説書ける!やったあと思ってましたが、なぜかあまりやる気が出ず、更新が遅れてしまい申し訳ございません!

 

これからも毎週水曜日(次回8月24日)に標準を合わせ、毎週投稿していきたいのでこれからもよろしくお願いします!

感想待ってまーす!