HIDT forever 第13話 「HIの合図と封筒の決断」
HIDT forever 13話
「HIの合図と封筒の決断」
「おい、これ本当に動くんだろうな?HI」
封筒はHI自作の電動スケートボードを目の前に、トントンと壊れないかわかりやすく叩いて確認をした。
「石橋を叩いて渡るってか?封筒。俺が不良品を作ったことなんか今に一度あったかよ?」
「石橋というか、そもそもクソほどあぶねえものを壊れないか試してるんや。同じにすんな!お前この前作った謎のメガネ一回使っただけでぶっ壊れたじゃねえか!全然信頼してないぞ!俺は!」
「俺の発明品は悪用されないために一回の使い切りにしてるんや。うん、悪用されないために...」
「絶対うまく作れないだけじ...」
「うるせぇ!じゃあ封筒、お前は走っていけ、つべこべいう間にあの子は離れていってんだぞ!」
二人がそうこう口論しているうちに彼女につけたGPSは移動を続け、もう二人がいる地点から10キロほど離れていることに気づいた。
「すまんなHI。お前を信頼できなかった俺が悪かった。行くぞ、あの子を助けるため、いや俺らの未来のために!」
「あんまカッコいいこというなや、主人公は俺やぞ。勘違いすんな」
「なんだよ主人公って!小説の中でもあるまいし...」
「ほら、行くぞ。乗ったら右足で思いっきりボードの端にあるその☠ボタンを踏むんや。その間は最高60キロまでスピードが出る。たしか。」
「すごいなHI!初めは慣れるまでスピードださないようにしないとな。ん、これを踏めばいいんか、ほいっと。ンンッッ!」
その瞬間とんでもないスピードで封筒のスケートボードは大通りを爆走していった。
「ありゃ、スピード出しすぎや。どんだけ張り切ってるんや。もっとゆっくり踏まないとな。ほらっ、ンンッッ」
ゆっくり踏んだはずのHIは封筒の倍くらいのスピードでその跡を追った。
「お、おぃいいHIぃぃ!早すぎだろぉお!これぇぇえ!」
「なんやってえぇぇ?風が強すぎて全然聞こえないぞぉぉお」
「このスピードならぁああ、日本の反対のブラジルまで吹っ飛んでいきそうな感じだぞおぉぉお?」
「あーん??誰かブラジル人だとぉお?封筒しばくぞぉぉおー?」
「そんなこと言ってねぇよ何言ってんだぁぁ」
あまりの速さに周りの風の音がひどく、二人はまともに会話をすることができていなかった。
しかし、HI自慢のスケボーはなぜか自動操縦システムが搭載されていて(本人は入れた覚えがない)、GPSの方向へ自動で向かうようになっていた。
彼女につけたGPSはそのまましばらく街を横断し、ある場所で止まったのをHIは手元の探索用時計を見て確認した。
「こっここは....」
を指し示していたのだ。
その後彼女たちから10分ほど遅れて、HIと封筒は現地に到着した。
「おい、まじでここなのか?HI」
「あぁ、間違いねぇ。ここだ。」
二人の前にあったのは国の中枢機関の一つであり、主に国同士の外交を司る省庁、外務省だった。目の前にはとてつもなく大きな鉄の扉があり、とてもじゃないけど鍵なしでは中に入ることすら許されないようだった。
「おい、これはとうとうやばいな。なんで国のでけえ機関にあいつが拉致されるんだ。封筒、どう思うよ。」
「え、あいつのお父さんって外務省勤務やろ。普通に妹に話があったんちゃうか。」
「おまえはバカなのか?な訳ないやろ。なんであんなところで車にぶち込んで誘拐する必要があるんだよ...」
「え、ってことはまさかあいつの父親が黒幕?」
「いや、そこまで決めつけるのはまだ早いが、その可能性は少しありそうだな。」
HIと封筒は目の前で起きている状況をいまいち把握しきれてはいない。でも彼らは彼女の身に何か危険なことが起きている、少なくとも父親に会うといった甘い理由ではないことを直感で感じた。
「おい、でもどうするよHI。あの子はここにいるのは確実だとして...正面から入って助けるとかもはや無理だろこれ。」
「そうやな、まずこんなクソでかい建物のどこにいるのかよくわからんからな....。でもなんだろう、何か嫌な予感がするんや。お前もわかるやろ。」
「あ、あぁ。俺らがここで逃げたら全てが終わる気がする。俺の勘がそう言ってる。dtの繊細な勘ってやつや。」
「間違いねぇ。僕に一つ案がある。乗ってくれるか?封筒。」
「え、えぇ...今度は大丈夫なんだろうな...。前回はまだよかったけどよ、ここで見捨てられたら俺確実に捕まるし、終わるぞ。」
「すまんあの時はちょっとふざけたわ。今回は大丈夫や。バレずに突入できる完璧な考えがある。」
「頼んだぞHI。」
封筒はHIの作戦を受け入れるのに対し始めかなり抵抗したが、時間もないということもあり渋々受け入れ、作戦の準備を開始した。
一刻を争うという状況なこともあり、彼ら二人には今にもない緊張感が走った。
ー数分後ー
「ニホンゴワカリマシェーン!」
「おいおい、エンベロップ。ここは外務省だぞ。変なことすんなよな!アハハァ!エンベロップ ピース!✌︎('ω'✌︎ ) (カシャッ)アハハァ!」
封筒は金髪のウィッグにHI特製の高い鼻とサングラスをかけ、明らかに怪しい外人のコスプレをした。
一方HIは青く鮮やかなアロハシャツに一眼レフを首にかけ、さらにサングラスを頭にかけ、いかにもハワイから海外の友達を連れてきた頭のおかしい日本人のような変装をして、外務省の重い扉の目の前に立った。
「お前嘘だろ。これうまくいくのかよHI」
「まぁ、見てろって。どっかのアニメでやってたんや。うまく行くやろ。」
「まぁなら大丈夫か...」
二人はアニメの影響を受けやすい。
「人生のバイブルはアニメにあり!」という謎のスローガンが彼らのモットーにあり、アニメの通りにやればうまく行くという根拠のない危なすぎる思想を持っていた。
しばらくすると、職員と思われる人が当然ながらかなり怪しそうな顔をして二人に向かってくるのが見えた。
「ちょっと君たち。そこで何してるのかな。ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」
「アッ!youワ リアルジャパニーズ デスカ!?oh my god!! HI!ジャパンデワ アイサツデ ハグヲシテ イインデスカ?!」
「おいおいエンベロップ落ち着けよん。ハグのカルチャーはねぇんだぜジャパンでは。あ、すいません。失敬失敬。最近日本に帰ってきたもんで、友達のエンベロップに日本の案内をしてやってたんですよ。」
「は、はぁ。それでなんのようで?」
係の人はかなり呆れた顔を見せた。
しかし、係の人は割と優しそうな顔をしており、かなり油断をしてそうだから戦えば俺にもやれるんじゃね?と余計なことをHIは思ったが、一旦落ち着いて計画を続行した。
「いや、それがねぇ。エンベロップアホだからヨォ!パスポートを落としちまったみたいなんだヨォ!ここにくればなんか手がかりが掴めると思ってナァ!チェケラァ!」
「パスポート紛失のお手続きですね。ここは外務省ですのでそう言ったものは各国の大使館で手続きを行うようになってます。お帰りください。」
「そう、固いこと言うなよアンちゃん!固いのはあそこだけしとけよなぁ!」
「HI! ソレガジャパーニーズジョーク ッテヤツ デスカ!?」
「そうだぜ!エンベロップ!よくわかったな!アハハッ!」
「あのー。もうそろそろ帰ってもらえますか?僕も仕事がありますので。」
「大使館の場所とかわからんし!パソコンもケータイもないから調べられねぇんだよ!せめて場所だけでも教えてやってくれねぇか...!HIからのお願いダYO!」
係員の人は二人のだるすぎるノリに終始ひいていたが、早めに相談に乗り次の仕事に行ったほうがいいと思ったこともあり彼らに中に入るように進めた。
「わかりました。じゃあ地図と場所は言うので中に入ってください。まじで終わったら早く帰ってくださいね。」
「それでこそジャパニーズだぜ!な!エンベロップ!」
「ヤッパリ ニホンジンワ ヤサシイネェ!」
なぜこの芝居が上手く行ったのかは二人が一番理解できなかったが、とりあえず第一関門である中に侵入することには成功し、二人は目を合わせ安堵の表情を浮かべた。
ー遡ること10分前ー
「いいか、この作戦で中に入ったら...」
「おい、HIうそだろ。お前こんな意味わからん謎の芝居で本当に上手く行くと思ってんのか、頭腐ったか?」
「いやいや、アニメでは上手く言ってたからな。まぁとりあえずお前は黙って従え、時間がない。」
「は、はぁ...」
封筒はかなり不満そうだったが、時間のこともあり、HIの要求を飲んだ。
「それで中に入ったら俺らは別行動だ。いいな?お前はその雑な日本語とつまらないトークでなるべく時間を稼げ、その間俺はトイレに行くとでも言って一人になって中を捜索する。」
「わかった。合図はどうする?稼げても10分くらいだぞ。」
「これを使え。」
そういうと、HIは手元から時計とバッジを取り出した。
「このバッジは俺と通信できるようになってる。ことが全て終わり、救出できたらこのバッジを3回叩く。そしたら、お前は外に出ろ。」
「わかった。この時計は?」
「これは時計形麻酔銃や。まぁなんかいい感じにやばくなったら使え。」
「お、おう。もしもの時はどうするんだ?」
「俺にもしものことが起きて、お前の助けを必要とする時、このバッジを2回叩く。いいな?でも、助けがいるってなってもお前がきても無駄な時はバッジを1回叩くからその時はお前だけでも逃げろ。」
「HI、お前はどうするんだそのとき。」
「死ぬかもな。お前とはもう会えないかもしれんな。まぁそんな時のことは考えるな。お前は目の前のミッションに集中しろ。」
「わかった....。絶対死ぬなよHI。気をつけろよな。相手は何人かわからないし素性もよくわからん。俺らで絶対一緒に帰るぞ。なんかあったら俺の命が最優先だけどなw」
「お、おうよ...」
ーーそして、今に戻るーー
「では、ここにかけてお待ちください。今地図を持ってきて参りますので。」
「さーーせん!ちょっとさっきジャポンの無料の水ガブ飲みしすぎてトイレ行きたくて...。ちょっと借りてもいいですカァ?」
「はぁ、わかりました。そこの角を左でまっすぐ行ったら右手にあります。」
「しぇーしぇー!ニーハオ!フウトウ、、後は頼んだぞ。」
「オウヨbrother!」
一見なんの意味もないこの彼らの別れ際の言葉に、二人は互いに大きな意志を感じたのだった。
ーこの作戦が封筒の場合ー
「HI...頼むぞ。まぁとりあえず俺にできることはあいつからの合図を待つ間、なるべく時間を稼ぐことだけや。」
「お待たせしました。これが東京都の地図です」
「ホォ!コレがジャポンのチズデスカ!スバラシイデスッ!」
「はい。そうですね。それで今いるのが外務省なので、ここですね。」
係員は指を刺し、赤のボールペンでぐるぐると印をつけた。
「それで、あなたはどこの国からでしたっけ?」
「ドコノクニ!?ハワイダヨ ニイサン!ハワイゴ オシエテアゲルヨ!?ニイサン!?」
「ハワイ語って...まぁ一つくらい聞きましょうか。ハワイ語とやらを」
「hoaloha...ホアロハ!」
「ホアロハ??アロハとはよく聞きますが、どう言った意味なんですか?」
「hoaワ ナカマ ダヨ! alohaは愛ダヨ!タイセツナナカマ イミスルヨ!」
「へぇー。イイ言葉ですね。まぁそんなことは置いといて、アメリカの大使館だと....」
この後も、封筒のどこから仕入れたのかわからない謎のハワイネタで、時間を稼ぎHIからの合図をまだかまだかと待った。
「それにしても相方の彼?遅くないですか?彼もアホそうだったし、迷子になったのでしょうか。私が見に行ってきますよ。」
「イヤ!マイフレンド ミチ マヨワナイヨ! キット スグ カエルヨ!」
「そうですか、でももう10分ほど経ちましたので、私が行きますよ。」
ー(HIそろそろ限界や...早くしてくれ...)ー
トンッ
「!?」
封筒の胸ポケットに入れてあるHIの通信機からまず一回音が聞こえた。
ー(おい、一回聞こえたぞ。はやく後二回ならしてくれ頼む。)ー
しかし、いくら待っても通信機からでた合図は一回だけだった。
ー(嘘だろ。HI。嘘だと言ってくれよ....)ー
「どうしました?顔色が悪いですが。あなたもトイレですか?」
「トイレ?そうだな、、。このいらない正義感もすべてトイレに流せたら、どれだけ平和で退屈な日常が俺に待っていたんだろうな。」
「なにを言ってるんですか?」
「HI すまん 許せ」
封筒はこの一言を最後に、目の前の男を思いっきり殴り飛ばし、建物の奥へと消えていったのだった。
ー完ー
ここまで飽きずに読み切ってくれているあーちゃんとルセリア君とソラ君にはまず感謝を伝えたい!!
最後まで何とか終わらせたいと思いますので、最後まで二人を見届けましょう!
他にもぜひ読んでくれてる人がいたら感想でも何でもいいからぜひ教えてね。
話がかなり進んできて作るのも大変になってきてますが、最後まで名前を借りている協力者のHIと封筒にはリスペクト最大限払ってがんばります(笑)
あしたは論文の発表もあるので頑張ります!
ではまた来週!!