HIDT forever 第8話「パンツと再来」
HIDT forever
第8話「パンツと再来」
5月7日
長いようで短かった、そんな微妙なGWも終わり、また新たに学校がスタートした。
GW明けなこともあるのかクラスの雰囲気はお休みムード一色だった。授業中に寝ている人はもちろん、休み明けではっちゃけすぎたのか、席にはところどころ空席が目立った。
そして4時間目の数学の授業が終わり、一斉にクラスにいつもの活気が満ち溢れた。
「おいおい、封筒おきろよ。もう4時間目終わったぞ。いつまで寝てんだこのロリコン」
そうHIは呟くと、思いっきり机に突っ伏して寝ている封筒の頭をどついた。
「いってぇええ....。おいHI何してくれてんだお前。せっかく可愛いレディーたちと遊ぶ夢を見ていたのによぉ」
「そんな夢を見ている間は、一生それが現実に起こることはなさそうだな...。」
「うるせぇよい。」
封筒はまだ目覚めていない目に目薬を一滴さし、大きく背伸びをした。
「そんなことしてる場合があったらなんか得意なことの一つや二つ作ってみたらどうだ?」
「得意なことねぇ。あるぜひとつだけ。」
封筒はそう自慢気に言うと、スッと深く深呼吸をして、なにやらぶつぶつと唱え、一番右の列の前に座っている女の子に指をさした。
「あいつのパンツは青色だ。俺にはわかる。」
「おいおい、本当か?」
「本当だ。かけてもいい。外れてたらお前に今日の昼飯を奢ってやろう...。でも当たってたらわかってるよなぁ?まあ確かめようがねえんだけどなwww」
「あ、あぁ」
「いまだに誰も信じてくれたことがねええんだぜ、俺には本当に見える気がするんだけどよお。お前は信じてくれるよな?HI」
正直、自信満々にしょうもないことを言う封筒に嫌気が差した。透視能力でもない限り女子のスカートの色を当てるなんて不可能に等しいからだ。
しかし、最近妹の好きなゲームをかってあげたせいで金欠のHIにとっては、封筒のそのバカな賭けから生まれる昼飯に魅力を感じたのだった。
「じゃあ俺が見てくるわちょっと待っとけ」
「お、おいHI?どうやって確認する気だ?バレたら退学じゃ済まねえぞ?そんなに昼飯が欲しいのかよい。」
「任しとけって。俺を誰だと思っていやがる。」
そしてHIは歩き出した。彼女のパンツの色に今日の昼飯がかかっている。こんなところで諦めるわけにはいかねぇ。こんなところで退学になってたまるもんか。彼の頭の中は邪念で溢れかえっていたのだった。
「ふんっ、ついに僕の発明品が使える時がくるとはな...。」
その瞬間HIは自分が持っているメガネを胸ポケットにしまい、新らしく右ポケットからメガネを取り出し、それをつけた。
「スイッチ オン」
「ブハッッッ」
その瞬間、彼の鼻からはまるで噴水のように鮮やかで透き通った血が噴射された。
腕のいいスナイパーに狙撃されわけでもない。鼻をほじりすぎたわけでもない。これは全てHIの魂ともいえる血だった。
「お、おいHI大丈夫かよ。」
「あ、あぁ、成功だ....。これは俺の開発した下着透け透けメガネ君1号だ。今は一個につき一回しか使えねえがな、実験は成功や。思ったよりも透けて見えやがって少々荒ぶってしまったよ。許せ」
「おまえ荒ぶったってよりかは、鼻血出して倒れたただの変態にしか見えなかったけどな...」
「お前には言われたくねえな封筒。ほら、お前の手がもう俺のメガネを欲っしているじゃねえか。」
「おれはそんなもんなくても見えるしなあw」
「本当かあ?w」
彼らはとても真剣だった。高校生活とはまさにこういうことを言うのであろう。バカみたいなことで盛り上がり、笑い、時には怒られ、そんなこんなを乗り越えて人間は成長し、進化する。彼らはまさにその瞬間を実感していたのだった。
「で?HI何色だったよ?」
「俺の負けだ。封筒。お前のその能力は本物だ。」
「だろ?この能力で世界を救えたりしてな。ハッハハハ」
「バカ言え、宇宙を救うんだよ。ハッハハハ」
彼らの大きな笑い声が教室に響き、周りの冷たい目線が一気に集まったのを感じた。
「よっし、じゃあ行こうぜHI。もちろんお前の奢りでな。」
「しゃーねえなぁー。ほら行くぞ封筒。」
彼らはそう話すと、罰ゲームの昼飯を買いに行くために廊下に出た。廊下には昼休みということもあり、たくさんの人がいてとても混み合っていた。陰の彼らにとってはとても居心地の悪い空間だった。
「確か学食は1階だったよな?ここは三階で、道は混んでいる。おい、封筒いい道を知ってるんだけどお前もくるよな?」
「もちろんだぜ相棒。」
そう言い放つと二人は窓を開け、前にある二階建の倉庫部屋に飛び乗った。
「やっぱ高校生はこうでないとな。」
「だな」
二人は倉庫部屋の屋上をつたってそのまま一階のフロアに行こうとした。しかし昨日雨が降った影響からか屋根は少し水を含んでおり、いつ足を滑らせてもおかしくないような状態だった。
「おいHI。お前そう言えば最近例の彼女とはどうなってんだよぉ!まさかやったんじゃねえだろうな?」
封筒からの悲痛の言葉だった。
「なんでかな。あいつからは全然返信が返ってこなくてよ。」
「嘘つけよHI!やったんだろ〜!」
封筒は冗談半分で言うと、HIの体を後ろからゆすった。
「お、おいやめろ!?」
その瞬間HIはバランスを崩し、足場を滑らせた。
「ま、まずい.. !?俺はまだDTなんだぞ?!こんなところで死ぬわけには!?」
HIが二階から落下しかけたその時だった。
「ムニュッ」
「ん、ん?俺生きてるのか。」
HIはゆっくりと目を開けると。誰かに自分が抱え込まれていることに気づいた。腕には柔らかい感触。全くもって感じたことのない新しく、優しい感覚だった。
そしてHIは固いコンクリートに叩きつけられたのではなく、ある女子生徒の腕の中に抱え込まれていることに気づいた。
「お、おいHI!?」
封筒が羨ましそうに叫んだ。
「君はいつも危なっかしいな。」
「お前はまさか?あの時の。」
HIの目の前に写ったのは、紛れもなく、先日HIの妹を窮地から救ったあの時の女の子だった。
「そうだよ。久しぶりだね。」
彼女はそういい、HIをその場にゆっくりと下ろした。
「さてと、HIくん。ついでに封筒も。君たちに話がある。少しきてくれないかな?」
「ついでだとおお!?」
「あ、あぁ。」
HIはこの女にはなにか秘密があると悟った。そして彼女の正体や、あの時の能力、全てが今求めているアモルという存在に繋がっているのかもしれないと、HIの勘がそう嘆いたのであった。
8話完